退 魔 破 邪



 「ナウマク・サマンダバザラダン・カン……」
  黒い三角形の炉には燃えさかる炎。
その前に南の方角を向き、天の玄武永泉が座っていた。
 高貴で柔らかな面を強ばらせ、不動明王真言を一心に唱え続ける。
 永泉の背後には、地の玄武安倍泰明。
 首飾りの羽を握りしめた、彼の怜悧な面には無しかない。
「ノウマクサンマンダ・バサラダンセン・ダマカラシャダソワカ」
 永泉が目を見張った。
 護摩壇の燃えさかる炎の中に黒い影。
「続けろ。永泉」
 泰明が冷たく言い放つ。
「ナウマク・サマンダバザラダン……」
 小さく頷くと、永泉は真言を唱え続けた。
「バサラダンセン・ダマカラシャダソワカ……」
 炎の中の影が大きく動いた。
 泰明が一歩踏み出す。
 炎から大きな影の塊が飛び出した。
 魔物!
 余りのまがまがしさに、永泉は目を瞑ってしまった。 
 泰明が手の中の羽を引きちぎりながら、永泉と魔物の間に飛び出す。
 羽を持つ泰明の手が、手刀となった。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!」
 泰明の声と刀印が、九字を切る。
 狭い部屋の中に、清浄な光りが溢れる。
「ぎゃーーー」
 魔物の断末魔の声。
 瞼の裏に光りを感じ、永泉が目を開けた時……。
 護摩壇の炎は消え、光も収まり、狭い部屋は闇の世界になっていた。
「……泰明殿?」
 泰明の背に声を掛ける。
「終わった」
 素っ気ないほど簡単に、泰明は事の終わりを告げた。
 何事も無かったかのように振り向き、永泉とすれ違うように部屋の外に向かう泰明。
 残された永泉はもう一度数珠を持った手を合わせた。
「オン・アロリキヤ・ソワカ、オン・アロリキヤ・ソワカ……」
 観世音菩薩真言……慈悲の真言を永泉は唱え始める。
 調伏されし、哀れな魂の為に……。

 
 
このイラストは「Milk Cafe」の美氷綺羅様から頂きました。美氷様ありがとうです〜。




玄武ですね〜(笑)やっぱり玄武の二人は美人さんです(^^)。


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